川上産業株式会社 くうきとともだち

相馬英斗(日本通運株式会社 大阪海外引越支店課長)×前澤麻美(川上産業株式会社 全社原材料統轄、ループリサイクルコンサルタント兼務)

「エコ」対談 - 小さなリサイクルの輪を、社会を変える大きな力に

「エコハーモニー®」の技術が応用されている「ループリサイクル®」。困難と思われた国内での循環フローを可能にしたのは、川上産業、日本通運、岩井化成という3社の運命的な出会い、そして、担当者たちのリサイクルにかける熱い想いでした。
物流環境特別賞を受賞したこの「ループリサイクル®」の取り組みについて、主担当のお2人にご登場いただき、開発エピソードや今後への想いを語っていただきました。

進行:杉山彩香(川上産業株式会社 プチプチ文化研究所所長)

ジャストタイミングな出会いから生まれた3社の輪

エコハーモニー®と開発者の前澤 エコハーモニー®と開発者の前澤 "エコぐま"こと、日本通運の相馬さん "エコぐま"こと、日本通運の相馬さん

杉山:まずは「ループリサイクル®」の取り組みが始まったきっかけについてお聞きしたいと思います。お2人には運命的な出会いがあったとのことですが……。

前澤:そうですね。相馬さんとは、すごくいいタイミングで、岩井化成の蛯沢さんを通じて知り合いました。私は2008年に、国内で余った有色の再生原料を有効に使用した『エコハーモニー®』を開発し、国内の再生業者を訪問してまわっていたのですが、使用済みのプチプチ®が多くのスペースをとり、迷惑をかけている現状を目にしました。プチプチ®は圧縮しても減容化が困難で、かなりの物流コスト・廃棄コストをかけて廃棄されていたのです。また、プチプチ®と同じポリエチレン素材のストレッチフィルムやポリ袋に関しても、回収しても使ってくれるメーカーがなく、うまく国内で循環できずに、そのまま中国に資源として売却されていました。こんな現状を見て、できることならもう一度プチプチ®にして使っていただきたいな、と思い、企画を始めました。それが2009年3月で、その約半年後に、相馬さんから私の考えと全く同じ内容の依頼をいただいたんです。

相馬:私の方は、実は最初は、環境配慮のためというよりもコスト削減のために、廃棄物の処理費を減らしたいだけだったんです。私たち海外引越の日通では日頃から、大量のプチプチ®やストレッチフィルムを使っているのですが、ゴミは容積に従ってお金が取られてしまうので、毎日一生懸命ゴミの上でシコ踏みしていました(笑)。でもそれには限界があるので、資源として買い取ってもらうために分別を始めました。そのとき感じたのが、きれいなプチプチ®がそのまま破砕され埋立てられるのはもったいないな、原料に戻して自分たちで使える梱包資材を作れないかな、ということだったのです。ある環境展で岩井化成の蛯沢さんと出会い、前澤さんをご紹介いただきました。
そこからは早かったですよね。まず、日本通運で分別したプチプチ®を、資源としてパッカー車で岩井化成に持ち込んで、ペレットに変えます。それを川上産業が買い取ってプチプチ®にして、また日本通運の海外引越で使うという、3社のリサイクルの輪ができました。今では日本の海外引越3拠点で日々『えこぷち®』を使っています。

前澤:2009年9月に相馬さんに出会って、2009年12月にはこの仕組みが稼働していていましたから、すごく早かったですね。それはやはり、すごく熱い気持ちがあったからだと思います。工場的には繁忙期で試作をするのは難しかったのですが、「できた本数全部買いますから」と、商品を注文していただいた感覚で、気楽に工場にお願いできたのが大きかったです。

試行錯誤で生まれた“グレー”のプチプチ®

「えこぷち」になる再生された原料 「えこぷち」になる再生された原料 再生されたえこぷち 再生されたえこぷち

杉山:こうして3社が出会ったわけですが、これまで誰もやってこなかった取り組みですし、立ち上げはすごく大変だったことと思います。

前澤:試作の時は、使用済み(U・SED)のリサイクル原料を入れる割合を変えながら試していたのですが、そのときは工場の中が、何とも言えないすごい匂いに包まれまして……。工場の生産部門からも「こんな匂いじゃ、やっていられない」なんて言われたこともありました(笑)。それに、出来上がった製品は色がちょっとグレーというよりねずみ色でしたね。

相馬:U・SEDの原料がたくさん入ったものは、濃いグレーのプチプチ®で、びっくりしました(笑)。単品で見るとほとんど分からないのですが、従来品と比べると明らかに色が違いました。でも、私たちとしては、「リサイクルしていること」をお客様にアピールしたかったので、むしろうれしかったんですよね。真っ白では本当にリサイクル原料が入っているか分からないので、濃ければ濃いほどよかったんです。そして最終的には、やはり前澤さんの熱意で、使いやすくてコシのある『えこぷち®』が出来上がりました。前澤さんは非常にご苦労されたと思います。

前澤:私は当時、このような取り組みを考えていたところに、ちょうどこのお話が来たので、「運命を感じ、何が何でも商品化しなければ」と思っていました。それに、相馬さんの“eCoぐま”のキャラクターにも熱さを感じました。相馬さんも、日本通運の社内で分別を徹底するのは大変だったことと思います。

相馬:そこは苦労しましたね。「やってくれ」と言っても誰もやらないので、まず自分でゴミ箱の中に入って分別をして、「一緒にやろう」と、やり方を教えていきました。でも分別していると、ゴミ置き場が次第に資源置き場に変わって、日に日にきれいになっていくんです。それに、出来上がったきれいな『えこぷち®』をみんなに見せるととても士気があがりました。こうやって好循環になっていったんですよね。

「もったいない」の声に見る裾野拡大の可能性

このパッカー車で回収しています このパッカー車で回収しています 分別されている様子 分別されている様子

杉山:今後、エコハーモニー®の拡販及びループリサイクル®の取り組みを拡大していくためには、どうしたらいいのでしょうか? やはり他の地域や家庭へも広げていきたいですよね。

前澤:これからは国内のいろいろなお客様との循環を構築していきたいです。現在、日通様の回収に関しては東京中心ですが、名古屋や神戸でも使っていただいているので、そちらでも小さな輪が作れたらいいですね。その場合、U・SEDの回収や、工場からお客様への配送で、どちらも物流が関わってくるわけですが、やはりプチプチ®はどうしても嵩張り、物流コストがかかりますので、一番近くのお客様に使っていただいて、一番近くのリサイクル業者に持ち込んで、また一番近くの製造工場に戻す、という循環が理想です。

相馬:全く同感ですね。空気を運んでいるようなものなので、この取り組みは、流通の採算だけを考えると非常に厳しくなってきます。でも、見方を変えると、ゴミを捨てる時に通常はお金を払っていますが、それが資源として買い取ってもらうことにより、プラスもしくはコストがゼロになるわけです。今、岩井化成に持ち込む量は月間10トンを超えていますが、これは日本通運全体の、1割にも満たない量かもしれませんので、まだまだ裾野は広いんです。大きな目でみると、U・SEDの回収の裾野を広げていくことはとても重要だと思いますし、一般の家庭からも回収するような取り組みにも広げていきたいな、と考えています。

前澤:私もそれは考えていました。たとえばスーパーにプチプチ®専用の回収BOXを設置してみたらどうかな、と。地域的にはテストでやっているところもありますが、私たちは運ぶことに強い会社ではないので、日本通運さんと協力して実現できたらいいですね。

相馬:私たちは梱包資材として大量のプチプチ®を使用して回収もしていますが、引っ越し後のアンケートで一番多いのは「大量の梱包資材がゴミになるのはもったいない」というお客様からの声です。そんな意識の高さを考えると、一般家庭でも、再生のプロセスに同意していただいて回収し、場合によってはその方へのインセンティブがあってもいいのかな、と思います。このようにして私たち日本通運が資源回収(運搬)の部分で活躍できたら最高ですね。

杉山:「もったいない」という声があったとのことですが、その後『えこぷち®』ができたことでお客様の反応に変化はありましたか?

相馬:やはりお客様からは、「使い終わったものがゴミにならないのは感心」という声が届いています。ちゃんと説明してご理解いただければ、誰も反対するような内容ではありませんし、私たちももっとアピールしなくてはいけないと思っています。

杉山:そこは当社としても課題に感じています。プチプチ®はどんなに環境配慮をして付加価値をつけても、最終的なエンドユーザーや、ものを受け取った方にそれが伝わらないのが悩みなんです。だからと言って「環境にいいものです」というような印刷をすると環境負荷になりますし、『エコハーモニー®』の場合はエコマークを取得していて、粒に素材を表す「PE」という刻印を入れているのですが、例えば、「青い色のプチプチ®はリサイクル原料で作られたプチプチ®だよね」といった感じに色で認識してもらえるようにしたいと思っています。将来的には、届いた荷物の中にエコハーモニー®が入っていた時に、「自分が分別して再生されたものが、こんな製品になるならリサイクルをがんばろう」という気持ちになるような流れができればいいな、と思います。

あらゆる垣根を越えた“リサイクルの輪”構築へ

様々な色の再生原料 様々な色の再生原料 全国の再生原料メーカーとネットワークがあります 全国の再生原料メーカーとネットワークがあります

杉山:では最後に、今後の夢について聞かせていただけますか?

相馬:私はひとつ夢がありまして、例えば私が使っているクリアファイルは、梱包資材から自前で作っているものですが、シール加工やくり抜きの作業は、茨城県にある障害者施設の作業所で行われています。現場を見ると、本当に熱心に黙々と作業をされているんです。これは、岩井化成さんのアイデアから始まった取り組みですが、分別やリサイクル網を広げるために、そういう方々のパワーも使っていけたら、と思います。作業所などに集積(分別)場を設けることもできると思うのです。

杉山:私も以前、障害者施設の方が食品トレーを分別をしている現場に行ったことがありますが、集中力がすごいですよね。PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)など、の細かい分別も触っただけで、一瞬のうちに分かるので、すごく早いんです。手で覚えていらっしゃるんですよね。

相馬:例えば、企業が使用済みの資材を再生業者に売却ではなくて、こういった団体や施設に寄付をし、障害者施設の方達の仕事が増えたらいいな、と思います。

前澤:そうやって、いろいろな方たちを巻き込んだ循環になれば理想ですね。

相馬:そうですね。再生業者に持ち込むまでのプロセスは、いろいろな展開があると思います。そういう仕組みの事業になってくると、「廃棄物」という括りではなくなってくると思うのです。

前澤:日本は資源がない国なので、自分たちがちゃんと繰り返し使わなくてはいけないはずなのに、使用済みのものが廃棄物として海外に行っているという現状があります。そして、最終的にはCO2排出権を買い戻して、海外に何重にもお金を払うようなことになってしまいます。私たちのプチプチ®はまだ一部ですが、いろいろなメーカーが同じ気持ちでどんどん製品化をしてくれれば、日本ももう少し潤ってくるんじゃないかと思います。

相馬:川上産業さんもライバルがいますし、私たちも引越業界でライバルがいます。でも大きな視点で考えると、ライバル関係や会社の垣根を取り払わなくてはならないな、と。国がそのようなプロジェクトを組んで、いろいろな会社の人が集まって知恵を出せば、ものすごく大きな動きになってくると思います。

杉山:今後大きな循環につながっていくといいですね。今日はありがとうございました。

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