8月6日、東京・東銀座にて、第1回「プチプチ学会」を開催しました。
プチプチの本来の役割は、大切なものを包み、衝撃から守ることです。
でも、気づけば、つぶしたり、座ったり、着たり、研究したり、さらには医療や環境、教育などの社会課題に向き合ったりと、想像以上に忙しい素材になってきました。
そこで、それぞれの分野でプチプチと関わってくださっている皆さまに集まっていただき、その研究や実践、アイデアを共有しながら、プチプチのこれからの可能性を考える場として「プチプチ学会」を立ち上げました。

研究、教育、アート、デザイン、医療まで
今回の学会には、大学教授、研究者、デザイナー、ジャーナリスト、おもちゃ・ゲーム開発者など、多彩な分野で活躍する皆さまにご登壇いただきました。
発表時間は、プチプチの日である「8月8日」にちなんで、一人8分8秒。
限られた時間の中で、それぞれの専門分野から見たプチプチの魅力や可能性について発表していただきました。
まず、プチプチ文化研究所から、学会開催の趣旨やプチプチの開発史をご紹介。川上産業からは、プチプチをまっすぐ切ることができる「スパスパ」についてお話ししました。
株式会社ウサギ代表取締役で、おもちゃ・ゲーム開発者の高橋晋平さんからは、「∞プチプチ」の開発を振り返りながら、プチプチが持つ“つぶす楽しさ”や“思わず触りたくなる魅力”を、商品や体験としてどのように形にしてきたのかをお話しいただきました。何気ない日常の行動に着目し、そこに遊び心を加えることで、新しい商品が生まれること。身近な素材の中にある面白さを発見し、これからのプロダクトづくりへ広げていく視点を紹介していただきました。

岡山大学教授の清田哲男さんからは、「包むことは、つなぐこと——巨大プチプチとアート教育」をテーマにご発表いただきました。巨大プチプチを活用した教育・表現活動の実践を通じて、素材に触れ、身体を動かしながら、参加者同士が一つの作品をつくり上げていくプロセスをご紹介いただきました。本来はものを“包む”ためのプチプチが、アートや教育の場では、人の感性を刺激し、対話や協働を生み出す“人と人をつなぐ素材”になることを示していただきました。

神奈川工科大学教授の渡部武夫さんからは、「プチプチはどう割れる?」をテーマに、誰もが一度は経験したことのある“プチプチをつぶす”という行為を、材料や構造、破裂の仕組みから科学的に解説していただきました。近々、このあとの新しい動きについても発表できそうです。

活水女子大学教授の守山正樹さんからは、プチプチの触感や、思わず手を動かしたくなる特性に着目し、実際に触れ、感じ、考える体験が、感覚を通じた学びや新たな気づきにつながる可能性についてお話しいただきました。AIが身近になる時代だからこそ、手を動かし、身体で感じることの大切さを改めて考えさせられる発表となりました。

武蔵野美術大学教授でファッションデザイナーの津村耕佑さんからは、衣服や素材、身体との関係を独自の視点から捉え、プチプチが持つ透明感や軽さ、儚さ、そして気泡が連なる構造の面白さに着目。包装材として見慣れたプチプチを“身にまとう素材”として捉え直すことで、ファッションにおける新たな表現の可能性を示していただきました。

携帯研究家・スマートフォンジャーナリストの山根博士(山根康宏さん)からは、「川上産業のプチプチリサイクルに見る、梱包材の未来」をテーマにご発表いただきました。スマートフォン業界を取材する一方、石油化学企業でポリエチレンやポリプロピレンの製造・研究・貿易に携わった経験を持つ山根さん。中国のEC市場で大量に使われる梱包材の現状を入り口に、「物流や暮らしを支える梱包材は、これからもなくならない。だからこそ、100%リサイクルできたら最高だ」という言葉とともに、メーカーの技術開発だけでなく、色のばらつきを受け入れることや回収に協力することなど、使う側の理解と行動も欠かせないという提言がありました。

公益社団法人JIDA/エコデザイン研究会の石渡文一さんからは、プチプチが持つ軽さや、空気を含んだ独特の構造に着目し、“包む”という従来の用途から離れて、“座る・使う・体験する”ための素材として捉え直す試みをご紹介いただきました。身近な素材も、特性を丁寧に観察し、異なる視点を加えることで、新たな機能や価値を持つプロダクトへ発展する可能性を示していただきました。

神戸大学の石北直之さんからは、「1粒のプチプチが、医療現場の『聴こえない』を変える」をテーマにご発表いただきました。医療現場が抱える課題に対して、プチプチの一粒が持つ構造や特性を生かした、新しいアプローチをご紹介いただきました。大がかりな装置や特殊な素材ではなく、誰もが知る身近なプチプチに着目することで、医療現場におけるコミュニケーションの課題を解決できるかもしれない——小さな一粒に秘められた大きな可能性を感じさせる発表となりました。

そして、日本記念日協会代表理事の加瀬清志さんからは、8月8日「プチプチの日」の成り立ちと、記念日が果たす役割についてお話しいただきました。プチプチの粒の並びや、「88(パチパチ)」という音のイメージから生まれた「プチプチの日」は、2000年に日本記念日協会へ登録されました。記念日を設けることで、商品や素材への親しみが生まれ、新しい出会いや会話につながっていくこと。プチプチの楽しさを広く伝えてきた8月8日の歩みとともに、記念日が人や社会をつなぐきっかけになることをご紹介いただきました。

プチプチから生まれる、思いがけない出会い
どの発表にも共通していたのは、プチプチを単なる包装材としてではなく、新しい視点や発想を生み出す“きっかけ”として捉えてくださっていたことです。
医療とプチプチ。
教育とプチプチ。
アート、ファッション、デザイン、環境、遊びとプチプチ。
普段はなかなか出会わない分野同士が、「プチプチ」という一つの素材を介してつながり、新しい可能性が次々と見えてきました。
後半のクロストークでは、「今後プチプチでやってみたいこと」をテーマに、登壇者の皆さんと自由に意見交換。会場からもアイデアが寄せられ、プチプチの未来を一緒に考える、楽しく刺激的な時間となりました。

クロストークの後には、フォトライター・ジャーナリストの栗原景さんから、「プチプチ新幹線野立看板」についてお話しいただきました。新幹線の車窓から見える、あの印象的な看板に着目し、鉄道に精通する栗原さんならではの視点で、その魅力や楽しみ方をご紹介いただきました。学術的な発表が続いた後、身近な風景の中にあるプチプチを楽しく掘り下げるお話に、会場も大いに盛り上がりました。

名前はプチプチに。中身は、もっとふくらませていく
川上産業株式会社は、2026年10月1日から「プチプチ株式会社」へ社名を変更します。ちなみに、プチプチ文化研究所という名称はそのままです。

名前までプチプチになりますが、私たちが目指しているのは、プチプチを包装材としてお届けするだけではありません。
プチプチという素材を通じて、人と人、研究と社会、アイデアと未来をつないでいくこと。
今回の学会が、ご参加いただいた皆さまにとって、今後の活動や新しいアイデアにつながる“小さなプチッ”としたきっかけになっていれば、とてもうれしく思います。
第1回ということで、手探りの部分もありましたが、登壇者の皆さま、ご参加いただいた皆さま、そして開催にご協力いただいた皆さまのおかげで、楽しく有意義な時間をつくることができました。
本当にありがとうございました。
第2回、そしてその先へ。
これからも、プチプチから広がる研究と出会いを、皆さんと一緒に楽しんでいきたいと思います。