プチプチ文化研究所

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〈第6回〉プチプチ×岸本敬子「絵で包む」イラストレーションを用いた魅力的なプチプチの制作

所長:皆さんこんにちは、プチプチ文化研究所の杉山彩香です。プチプチ文化研究所プチプチ対談、記念すべき第6回目のゲストは京都精華大学デザイン学部イラスト学科准教授の岸本敬子さんに来ていただきました。よろしくお願いします。

岸本さん:よろしくお願いします。

所長:イラスト学科3年生のイラストコミュニケーションという授業の1つの取組課題としてプチプチを取り上げていただきまして、ありがとうございました。

岸本さん:このような課題にしました。

「絵で包む」イラストレーションを用いた魅力的なプチプチの制作

大切なものを安全に持ち運んだり保管するのに欠かせない「プチプチ」。プチプチを制作する会社、川上産業のオリジナルグッズの制作。ペアグラスをユニークに包むためのイラストを考え、制作する。
【制作のポイント・要件】
・ 平面の絵としてだけではなく、包んだ状態も意識して制作すること
・ 使用シーンなども具体的に想像してアイデアを考えること(お祝い、誕生日プレゼント、イベント用)
・ 包み方は自由。(2つまとめる、一つ一つ包む)
・ プチプチサイズ:300×600mm(カット自由。)
【目的】
・ 川上産業株式会社という会社の存在の認知度アップ
・ 面白い取り組みをしている会社であることをアピールしたい
・ポップアップショップ・イベント出店販売、雑貨店での取り扱い など
【ターゲット】
・20〜30代を中心とした若者。流行やおしゃれに関心の高い人

思いがけずとまどった学生たち

岸本さん:誰にとっても身近なプチプチだったので、学生たちはスムーズに課題に取り組めると思っていましたが、課題が発表されたときは、思いがけず最初はとまどっていました。

まずひとつめに、学生は自分のイラストでグッズが作るということに興味を持ってこの授業を選び参加しているわけですが、学生の考える「グッズ」というのが、いわゆるアニメのキャラクター等がそのままキーホルダーやカードになっているような、二次展開のされたものを指していたことです。

しかし蓋をあけると、目的や用途、素材の特徴などからイメージを膨らませてイラストのアイデアを考える、というデザイン的な思考が求められる課題であったために、学生たちはただ絵を描くだけではだめだということに気づいたようです。最終的なアウトプットとしては同じ「イラスト」ですが、そこには大きな違いがあり、そこに気づくところからのスタートでした。

所長:そのお話を聞いて、私も意外でした。

岸本さん:川上産業さんからいただいたサンプル張を見て触っている内に、どんどん発想がわいてきたようです。

やはり、見て触って感じるってすごい力だなと感じました。いろんなカタチや素材触っているとワクワクしてくるのか、手や目からの刺激で脳が活性化したのか、「楽しそう!面白そう!」という表情に変わってきました。

所長:最初の戸惑いを乗り越えて、学生たちはどのようにアプローチしていったのでしょうか。

岸本さん:自分の中からだけではいいアイデアは生まれてこない、というわけで授業の初日に、「アイデアノート」を作るように伝え、まずは世の中にある、自分が「可愛い!面白い!おしゃれ!」とおもうパッケージをたくさんリサーチしてきてもらいました。写真を撮ったり、可能ならスケッチして、良いと思ったポイントをメモするなど、なんでもいいから書き留めていくように伝えました。

そして次の週に、それぞれ良いと思ったパッケージを発表し、共有し合う時間を持ちました。

23人が持ち寄った様々なパッケージのアイデアを見て、それぞれの工夫されている点などを考察し、アイデアの引き出し方のヒントを得る時間にしました。

所長:前期の課題を締めくくる、合評に参加させていただきありがとうございました。お一人ずつしっかりプレゼンしていただき、4時間ほどの長丁場ですがとても楽しく刺激をいただいた時間でした。プチプチは知っていてもプチプチの先入観にとらわれない柔軟な考え方、モノづくりをするアプローチの仕方、発想方法が大変興味深く、こちらもたくさんの刺激をいただきました。

新しい体験

所長:プチプチを使うことで、学生たちの創造性や表現力がどのように刺激されたと感じましたか?

岸本さん:今の学生の世代は、ほとんどの学生がデジタルで絵を描いています。情報もスマホから仕入れることが多く、暇つぶしもYOUTUBEなど、、、画面上でだいたいのことが完結してしまっている。プチプチの特長の一つとして、「触れるもの。」であると思います。そのことから、今回のプチプチ課題は学生にとってとても新しい体験になりました。

所長:アナログ感がいい意味で役立ったんですね。

岸本さん:プチプチは、世代を限定せず、包む、守るといった機能を持って生活に役立っていたり、ストレス解消にプチプチ指でつぶすといった、人の感情に作用したりもする面白い素材ですよね。

所長:嬉しいです!プチプチを用いた課題は、学生たちにとってどのような学びの機会となりましたか?

岸本さん:ポスターやモニター上のイラストと違って、手で触って、質感を感じられるものなので、用途や特徴のあるものと自分の絵をかけ合わせるとどうなるか、どういう効果があるかを考えるよい機会になりました。五感で感じる絵を描くって、生身の人間しか想像できないことだなと思います。

所長:プチプチを使った課題を通じて得られた成果や学びを、学生たちが今後の制作活動やキャリアにどのように活かしていけると考えていますか?

岸本さん:イラストが使われているものは身近にあふれるほどあります。生活雑貨、インテリア、衣料品、化粧品、食品パッケージ、、、そういうものを見る視点が少しでも変わってくれたらいいなと思います。自分の描く絵がどういう印象をもたらし、その印象はどういうモノと親和性が高いだろうかと考えるキッカケになってくれることを期待します。

所長:今後もプチプチを使った課題を取り入れる予定があれば、どのようなアプローチやテーマを検討していますか?

岸本さん:後期はプチプチを用いた「触れる絵本」のような課題もいいと思っています。

所長:いいですね!やってみたいですね。

~岸本敬子さんプロフィール~

グラフィックデザイナー/イラストレーター
1984年兵庫県生まれ。2007年京都精華大学芸術学部デザイン学科ビジュアルコミュニケーションデザイン専攻卒業。2007~2012年広告制作会社でデザイナーとして従事。
2013年より京都精華大学イラスト学科で教員として勤める傍ら、主にブランディング、グラフィック領域において、グラフィックデザインの他、イラストレーション、ビジョンビジュアル設計をしている。
創作活動として、版画やペン画、墨絵、切り紙、デジタルなど色々な表現技法を日々模索中。

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