プチプチ文化研究所

プチプチ文化研究所

第1回 プチプチ×高橋晋平「プチプチアイデア会議開催」

所長:皆さんこんにちは、プチプチ文化研究所の杉山彩香です。プチプチ文化研究所プチプチ対談、記念すべき第1回目のゲストは株式会社ウサギの高橋晋平さんに来ていただきました。よろしくお願いします。

晋平さんはあのプチプチとコラボした玩具「∞プチプチ」(*1)の元開発担当者でもあります。

高橋:よろしくお願いします。

所長:当研究所の書籍『プチプチオフィシャルブック』(*2)にも書いたのですが、プチプチに限らず、椅子があれば座りたくなるし、スイッチがあれば押したくなるし、取っ手があれば引っ張りたくなる気持ちを心理学ではアフォーダンスというそうなんですが、∞プチプチは、プチプチしたくなるという誰もがもっている欲求を満たしてくれるところがすごいアイデアで、大ヒットになったのだと思います。

日常にある衝動を誘うものたち

高橋:なぜか触ってしまうのってありますよね。プチプチ以外でこれやってしまうっていうのはありますか?

所長:学生の頃を思い出すと、ペンのロックをカチカチしたりとか、ペン回ししたりとかやっていましたね。

高橋:それでいくと僕はやっぱり箸袋とかストローの袋をボロボロにしちゃうんです。喫茶店に行って打ち合わせすると、ストローの袋は最終的に粉になってしまいます。

所長:そこまでですか、激しいですね。

高橋:つぶして丸めてシワシワにして、最後あれこんなになってるっていう感じです。そんな僕が今すごくハマっているタングル®(*3)というおもちゃがあるんですが、これはそのストローの袋に似た性質があると思うんです。1981年にアメリカで開発されて以来、累計1億5,000万個売ってるらしいんですよ。

所長:すごいですね。

高橋:それもまた衝動というか、アフォーダンスの力の証明だと思うんです。
このタングル®って玩具、そこまで有名というわけじゃないんです。実際、国内でも大掛かりな宣伝をしているわけではないんです。でも玩具売場やお土産物売り場にサンプルを置いておくと、みんな触るんですよね。そして気に入って買ってしまう。そのようにしてこれだけの数、売れているんですよね。

∞プチプチも同様で、触りたいから買っちゃうって言う説明不要のマーケティングで大ヒットになったんです。それは狙っていたんですけれど、生活に役立つものでもないし、目的もない商品なのに置いておくと売れていくのってすごいですよね。

所長:タングル®はどんなふうに使うんですか?

高橋:ただ手で触れて不規則な動きを楽しんだりするものです。僕にとっては箸袋をデザイン的にも良くしたようなもので、さらに何時間いじっても粉々にならないので気に入っています。

所長:(実際にさわってみて)見た感じ、こんな動きをするように見えないから面白いですね。触るとこんなふうに柔らかいんだとかこんな風に動くんだとか。ちなみに日本ではどういうところで売っているんですか?

高橋:雑貨やおもちゃを扱っているお店や、家電店のおもちゃ売場などで売っています。やっぱりサンプルを置いておくと老若男女が買っていきます。

今年ハンドスピナーとかも流行りましたけれど、スクイーズトイなんかも人気で「触る系玩具」というジャンルが作られた年かもしれません。
僕は、これらの玩具は会議中に話すときにあると最適だと思っているんです。

所長:あ、いいかもしれませんね。

高橋:しゃべっているときにストローの袋をいじっているのと同じ感覚で人間って何かを触っていると落ち着くって言う部分があると思うんです。プチプチも多分つぶしながらしゃべると同じような効果があると思うんですが、プチプチしちゃうから音が……真面目な会議には向かないかもしれませんが。

所長:(プチプチしながら)確かにそうですよね。

高橋:会議中に偉い人もみんなこれを触りながらしゃべったら何か変わるかもしれない。僕はいろいろな会社のアイデア会議に出席したり、企業内に企画チームを立ち上げる仕事をしているのですが、タングル®を持参して配ることもあります。導入してみませんかと。

プチプチの魅力は切なさ?!

所長:改めて晋平さんが思うプチプチの魅力ってなんでしょう?

高橋:いろいろあるんですけどまず、潰す前の感触がいいです。

所長:それは私も同じです。

高橋:プチプチって柔らかくて可愛いじゃないですか。このかわいいものをつぶしてしまという行為の中に何かがあるのかなって思うんですよね。僕、じつは初めてプチプチというものを認知したときのことをすごくはっきり覚えていて。クッキーの缶に入っていたっていうよくある話なんですけど、親がこれを指で潰せるってことを教えてくれたんです。僕はそれをつぶして面白いって思ったんだけど、でもなんか潰しちゃうことがもったいない、潰すと二度と元に戻らない、つぶしてしまった罪悪感があったのを覚えています。

所長:何歳位の時ですか?

高橋:そこまで感じたって言う事は小学生位だったと思うんですけれど。これは潰していくとなくなる、無に向かっているんだみたいな。

所長:そうですね、無になります。

高橋:結局僕は今までこういうプチプチシートを全部つぶしきれたことがない気がします。粒が減ったら何かが終わるような気がしちゃって。たかだかこのシートでそこまで思わせちゃうってことはすごいなっていつも思う。もともとはショックを吸収するためにあるはずなのに潰されちゃうのが切ない。

所長:特にプッチンスカットは、潰されるためだけに生まれたプチプチなので、ものを守ることもなくただ潰される。矛盾した存在かもしれませんね。

高橋:∞プチプチの「∞(無限) ×プチプチ」って言う組み合わせのコンセプトは僕の中の変な卑屈な性格や体験から来てるんじゃないか気がちょっとするんですよね。これだったらつぶしても無くならなくて安心だから。

所長:プチプチというネーミング自体、最初からひらめいたんですか。

高橋:最初は「プチプチキーホルダー」っていう企画名でした。ボタンをプチプチ押す気持ち良いキーホルダーというシンプルなコンセプトで会議で提案して、僕は本当はボードゲーム担当だったからこいつ何を言い出すんだって周囲はリアクションに困ったようでした。でも後からよく考えてみたら、「潰したらなくならない」というのが本当のコンセプトだったということ気づいて「∞プチプチ」になったんですよ。

所長:すごくいい名前ですよね。

高橋:めちゃくちゃいいネーミングだなと自分でも思っています。御社のプチプチの日は8月8日ですが、8と∞は形も似ている。

所長:偶然だけどすごいですよね。

プチプチしながら……プチプチコラボ企画

高橋:すでにプチプチのアイデア商品はいろいろありますよね。寝袋とか結露防止の窓シートとか。そもそも最初はプールに落ち葉を入れないために作られたシートなんですよね。

所長:そうなんです、諸説ありますが、落ち葉よけとして、水に浮くシートが欲しいと言うことで開発されたといわれています。

所長:晋平さんとはまたいろいろコラボしたいですね!

高橋:僕が勝手に考えているネタをプレゼンさせてもらってもいいですか? プチプチは素材として超面白いですから。

所長:ありがとうございます。

高橋:プチプチと恋愛というテーマで考えてみたんですが、プチプチは顔にかぶせるとモザイクにすることができると思うんです。プリクラってちょっと画像が荒いから綺麗に見えるような感じで、プチプチもかぶるときれいに見える。実際にやってみたら多分その効果がわかるはず。

所長:やってみましょう!

高橋:僕がやってもイケメンに見えると思うんですよね。

<実際にやってみた>

高橋:どうですか?

所長:あー、きれいに見えます。

高橋:見えますよね、やっぱり。これ顔全部隠れてますか。

所長:でも実際に晋平さんだってわかりますよ。ちょっと顔から離してみましょうか。この位が1番美しいのかなあ。男性だとあまり関係ないかもしれないですけど女性はお肌の荒れとかも隠せますね。

<所長もやってみた>

高橋:もともと杉山さんは美しいですけれど、やっぱ美しく見えるわ。
失礼になっちゃうかもしれないけど。これで顔を隠してデートとかしたら面白いかもしれない。

プチプチは潰すだけじゃない可能性がある

<タングル®を触りながらブレスト>

高橋:あとプチプチ握手恋愛効果っていうのがあると思うんです。

所長:以前から力説してましたよね!

高橋:プチプチ越しに握手するっていうのは、プチプチという空気の膜で遮られて触っているけど触ってない状態、触ってないのに好きになるんじゃないかって言う仮説をどこかで証明したいんです。実際に握手するのとプチプチ越しに握手するのとどっちがドキドキするかプチプチ越しの方がドキドキすると思うんですよね。

所長:次は触りたいとか?

高橋:そうそうそうお預けされたみたいな。大人になると握手はもう仕事の一環で、僕も女性の方と握手してもなんて何も思わないんだけれどプチプチ越しに握手するとなんだこれはって言う感じになると思うんです。

所長:独特のツブツブと相まって。

高橋:何かを刺激するのかもしれません。あると思うんだよなぁ、実験したい。

高橋晋平(たかはし・しんぺい)

株式会社ウサギ 代表取締役 大手玩具メーカーに10年間勤務し、数多くのヒットアイデア玩具の商品開発に携わる。著書に『プレゼンをキメる30秒のつくり方 話し下手でも提案が通る勝ちパターン』(日経BP社)、『アイデアが枯れない頭のつくり方』(CCCメディアハウス)など。2013年にはTEDxTokyoにも登壇。現在はさまざまな企業と新商品・新サービスの企画開発を行っている。アイデア評論家・セミナー講師としても活躍。ブログ・Twitterでも情報発信中。 2017年5月14日に、カードゲーム「民芸スタジアム」を発売。

(*1)∞プチプチ
2007年9月22日に発売されたプチプチをつぶした感覚を本物そっくりに再現したキーチェーン玩具。プチプチメーカー川上産業の協力の元、本物のプチプチをつぶしているかのような感覚を楽しめる玩具として大ヒットした。現在は販売終了。

(*2)書籍『プチプチオフィシャルブック』 2006年7月28日に出版された「プチプチ」初の公式本。

(*3)タングル® 1981年に米国のリチャード・X・ザヴィッツ氏により開発され、これまでに世界で累計1億5000万個以上が販売されている商品です。90度の角度に湾曲しているパイプのみで構成されており、基本形は4重に巻かれた形をしています。それをほどいたり、絡ませたり、ちぎったり、つなげたり、元の形に戻したりと、手指の赴くままに自由に動かす感触が、思わずクセになってしまう手遊び玩具です。高橋晋平さんは、「ついついいつまでも触ってしまうようにできている、秀逸な感触玩具」と語っている。

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