プチプチ文化レポート

〈第2回〉プチプチ×津村耕佑「プチプチ会議」

所長:皆さんこんにちは、プチプチ文化研究所の杉山彩香です。プチプチ文化研究所プチプチ対談、記念すべき第2回目のゲストはファッションデザイナー・アートディレクターの津村耕佑さんに来ていただきました。よろしくお願いします。

津村:よろしくお願いします。

プチプチの「美」とは。

所長:津村耕佑さんはプチプチパズルウェア「プチプチタングル」の考案者でもあります。ご著書「賞味無限 アート以前 ファッション以降」では、「プチプチ」についてもたくさん語っていただいていてありがとうございます。その中で、「プチプチの美」というキーワードがありました。津村さんが考える「プチプチの美」とは何でしょうか。

津村:プチプチは機能優先のもので、なくてはならないものですが、あまりにもあたり前にいつもそこにあるから特別感がない、その美に関して客観的に考えた人っていないと思います。改めて考えてみると、守るためにプチプチの粒の部分が整然と並んでいる、透明で光を反射したり、透過させたり。それに加え、軽さと相反してのボリューミーさ。機能優先で考えられた結果、辿り着いた形状なんだろうけど、とても魅力的な素材です。

所長:なんだか嬉しいです(照)ありがとうございます。

所長:津村さんは、1994年に発表されたブランド「FINAL HOME」でも既に、新聞紙などとともにプチプチも使ってくださっていましたが、そもそも、どうしてプチプチに着目したのですか。

津村:デストピアと生還をテーマに何か作れないだろうか、と考え「FINAL HOME」に繋がっていくことになります。表地と裏地の隙間を均等に区切り、そこを収納空間として保温効果にある新聞紙やボロ布、使い終わったプチプチ、非常食など、生き抜くためのもの、を詰め込んだコートを作り、究極の家「FINAL HOME」と名付けました。「FINAL HOME」にはロング丈の物は44個、ショート丈には28個のポケットがあります。ここに何をいれるか。最初は新聞紙を詰め込んで一晩路上で過ごしました。その後、プチプチもとても身近なもので、紙よりもクッション性や保温性があることに気が付きました。

着ることを考えるな

所長:津村さんとの最初の出会いは2012年でしたね。「六本木アートナイト2012」というアートの祭典に、武蔵野美術大学造形学部空間演出デザイン学科津村ゼミで参加するので、プチプチを提供してもらえませんか、というお話でした。2011年の東日本大震災の翌年で、イベントテーマも「アートでつくろう、日本の元気」ということで賛同させていただき、たくさんのプチプチを大学にお届けしました。ここからこのプチプチがどうなるんだろうと、胸を弾ませて。

津村:市民を巻き込んで、特別なステージがあるわけでなく、日常空間で行われるイベントです。お子さんたちもいるたくさん人たちの中で目立たないと楽しくない。そのためにボリューム感を出し、人と接触しても危険ではない物、と考えた時に「プチプチだ!」と思いつきました。ボリューム感をだそうとすると、支軸を使ったり、風船(ヘリウムガス)を使ったり、危険もありますし、プロフェッショナルなテクニックが必要。学生主体で行ったこともあり、身近なもので探していました。

所長:私たちが考え付かないようなデザインのプチプチファッションが多数登場して驚きました。学生さんたちにはどのように指導されたのですか?

津村:学生たちには、19世紀のヨーロッパのお姫様風ファッションにはするな、着ることを考えるな、というアドバイスだけして自由にやってもらいました。

所長:ファッションショーが目的だったと思うのですが「着ることを考えるな」とは斬新なご指導ですね。

津村:重ねたり、折りたたんだりと、服とは無関係な造形をしてから、着ることを考えろ、と。接着・固定が悩みどころでしたが、グルーというスティック状の糊を熱で溶かして固定する方法を学生が試行錯誤の上発見。この方法だと、普通の接着剤だと乾くまで時間がかかったり、テープだと見栄えが悪い、そのような問題が解決され一気に進みました。

所長:制作現場を見学させてもらいましたが、学生さんが自由に楽しそうにやっていたのが印象的です。

津村:「着ることを考えるな」ということで、最後にどうやって着るか問題が残りました(笑)切り込みを入れたりして・・プチプチで作った幾何学的造形物に体をはめ込み、被せる感覚です。

所長:そして本番を迎えられ、本当に街の皆さんを巻き込んだ素晴らしいイベントでしたよね!

津村:観客が自らプチプチドレスに触れ、プチプチを潰し、自分もドレスの中に入ってみる。プチプチを通して会話が生まれました。それと、プチプチドレスを着たモデルさんにはあったかいので喜ばれました。(開催は3月でした)

プチプチタングル

所長:プチプチタングルのアイディアはどうやって生まれたのでしょうか。

津村:先ほど、プチプチドレスを作るときに留める方法に悩んでグルーを使った、とお話ししましたが造形する時に、接着したり、縫ったりと、何か違う材料で「つける」のではなく、木の「ほぞ組」のように、他の材料を使わず「つける」「解体する」を簡単にしたいと考え、パズルのようにすればと思いつきました。そして柔らかくかつ剛性があるプチプチが最適だと。

所長:絡み合うということが面白い思い「プチプチタングル」と命名させていただきました。「プチプチタングル」最初の形から進化を遂げています。

津村:最初は「花」っぽいイメージ。そして知育玩具的な感じでお子さんが扱いやすいものを数種類考えました。これは扱いやすい反面、はずれやすい形でしたね。その後、数回のワークショップを通して、空間を建築のような感じで、家や部屋を作れるようにしたいと思い、現在のスクエア型とトライアングル型ができました。はずれにくく、さらに曲面も作りやすい。スクエアとトライアングルを組み合わせることもできる。

2012年 東京ミッドタウン デザインハブ
2013年 金沢21世紀美術館
2013年 森美術館LOVE展
2019年 チームラボキッズ

所長:ワークショップでは参加者がとても自由に遊んでいる印象です。

津村:ワークショップでは、組合せの仕方をレクシャーするだけにしています。あとは自分のイメージ次第。小学生だったらお城やロボットを作ったり、大学生だったら抽象的、幾何学的な造形をする人がいたり。グループの中に自然とルールを見出す人が出てきて、自然とその人がリーダーになっている。特別な道具は必要なく、想像力だけあればOK。コミュニティづくりのツールにもなるかも。

~津村さんプロフィール~

生き方や、ものづくりのあり方に独自の方法論でアプローチするファッションデザイナー、アートディレクター。1983年三宅一生氏のもと、クリエイションスタッフとしてパリコレクションに関わる。1994年「服は究極の家である」という考えを具体化した都市型サバイバルウェアFINAL HOMEを考案し、ファッションブランドKOSUKE TSUMURAならびにFINAL HOMEを、株式会社エイ・ネットからスタートさせ、2015年に独立。武蔵野美術大学造形学部空間演出デザイン学科教授。文化服装学院ファッション工芸専門課非常勤講師。日本文化デザインフォーラム会員。

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